スタジオジブリは長編映画だけではなく、企業CMやWEBアニメーションなど、短編製作の映像も多く手掛けている事はご存知でしたか?

確かにCMなどで、ジブリのあの独特のキャラクターや映像を見たことある…と思う人も多いのではないでしょうか。

『長篇ばかりがジブリじゃない。あれもこれも、正真正銘、ジブリ作品でした。』

と、株式会社スタジオジブリ代表取締役・鈴木敏夫プロデューサーが語る短編作品とは。

studio ghibli

1992年にスタジオジブリが、初めて短編作品「そらいろのたね」を手掛けました。

その後も様々なプロモーションフィルムやミュージッククリップ、企業 CM、WEBアニメーションなどを手掛けています。

1992年から2016年までの、全32本に及ぶ数多くの貴重な映像が収録された短編製作映像・ショートショート作品を収録した『ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016』が、7月にブルーレイとDVDで発売されました。

これらのショートショートには、宮崎駿をはじめ、近藤喜文、百瀬義行、稲村武志、田辺修、橋本晋治、大塚伸治、近藤勝也、宮崎吾朗などが名を連ね、スタジオジブリを支えてきた歴代の監督やアニメーターたちが作品を描いています。

いまの日本アニメーション界を牽引し、多彩な作品を世に送り出すスタジオジブリアニメーター達の技やこだわりが“ギュッ”と凝縮された短編の数々は、長編作品とはまた違った見どころが満載です!ジブリの短編はいかにして誕生したのでしょうか?

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1985年に株式会社スタジオジブリが誕生して以降、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』とアニメーション映画制作を主としてきたスタジオジブリ。

初めての短編作品、日本テレビ開局40年記念スポットとして放映された「そらいろのたね」の後は、CHAGE&ASKAの楽曲「On Your Mark」のプロモーションフィルムや「金曜ロードショー」のオープニング映像を経て、『千と千尋の神隠し』が公開された2001年頃から、長編映画だけでなくて幅広く映像を作っていこうという話になり、幅広く企業CMやスポット映像なども制作するようになりました。

鈴木敏夫プロデューサーよると、ジブリが始まってから十数年の間に作ってきた映画で協力いただいた、様々な企業から『CMを作ってくれないか』という依頼が来るようになったそう。

映画では出来ないような、腕のあるアニメーターたちが日ごろ“やってみたい”と思ってきたことを短編ではできるのではないか?と取り組み。

いわば短編製作映像はアニメーター達が好きな様に作った作品たち。

依頼をもらってもスタジオジブリ側から『注文に答えるということをやったこともないし経験もないんで、下手なんです。だから、まず好きなようにやらせてもらえませんか。で、ダメだったらやめましょう』という条件を出したそう!

そのほうがいいものができると信じていた製作者達。

そしてもう一つのルールが、“単独の商品のCMは作らない”ということ。

その為、短編で作っているものは企業広告が多いんです。単独ではなく企業向けの方が、クリエイティブはコントロールしやすいからですね。

ジブリではもちろん公序良俗に反しては行けないけれど、やっぱり作品は公序良俗に触れたほうがおもしろかったりします。

そういう意味で、短編製作だど、ちょっと尖ったことも出来流のがアニメーター達にとっても面白いところ。

ジブリ短編製作集

CHAGE and ASKA楽曲のプロモーション・フィルム『On Your Mark』

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ジブリ単品製作映像ファンの間ではもっとも人気の高いこちら、『On Your Mark』(オン・ユア・マーク)。

こちらはCHAGE and ASKAが発表した楽曲「On Your Mark」のプロモーション・フィルムとして作成されたアニメーション作品です。

1995年7月15日、映画『耳をすませば』と同時上映で公開されました。元々はCHAGE and ASKAが1995年 – 1996年にかけて開催したコンサートツアー「SUPER BEST3 MISSION IMPOSSIBLE」の中で、演出の一環としてコンサート会場で上映されており、PVを制作する際にアニメーションでやってみたいと持ちかけ、それならばと宮崎作品のファンであったCHAGEが提案したアイデアだそうです。

宮崎駿監督によると、タイトルや歌詞をあえて曲解し悪意に満ちた映画に仕立て、いつか来る未来に生きるということをイメージして制作したといいます。

ストーリー

地表が放射能で汚染され、病気が蔓延し、人類が地下に住むようになった世紀末後の未来の都市が舞台。

あるカルト教団の施設「聖NOVA’S CHURCH」を襲撃、制圧した武装警官隊。その中の警官2人は、教団施設の奥で翼の生えた少女を発見する。

2人は彼女を救助するも、研究資料として今度は政府機関の施設に連れ去られてしまった。2人は彼女を空へ帰そうと奮闘を始める。

作中では故意に不自然な描写が多く見られ、冒頭で主人公が乗っていると思われる黄色い車と、ラストの黄色い車の車種が異なっていたり、逃走の際に一度墜落したはずの自動車が、別のシーンでは飛翔しているなどが挙げられていますが、これは宮崎駿監督の後期作(「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」)の特徴を先取りしているんだそう!

ハウス食品“おうちで食べよう”CM

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宮崎駿監督が一般企業のCMを手がけたのは、2016年のこのCMが初めて。ちょうどこの頃、宮崎監督は昭和30年代に興味を持っており、家族の絆が強かった時代を何らかの形で映像化したいと考えていたそう。

家庭の食卓がもつ暖かさを伝えようとするハウス食品の方向性が、とてもよく表現された作品です。

けれどこの作品、肝心のカレーがほとんど出てこないんです。

それは監督が全体のコンセプトを考えた時、『カレー出さなくていいの?』って言ったからだそう!

その他、日テレ「なんだろう」CMスポットなども作画も全て宮崎駿監督。アニメーション名人っぷりが味わえます。

凄腕のアニメーターがとことん作った作品、ショートショート。

尺が短いものほど、世間の目が厳しく、必然的に上手い人に頼まざるを得なくなる。

だから、スタジオジブリ歴代の、腕効きアニメーターの仕事がダーッと集まったものになったと鈴木敏夫プロデューサーが語る『ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016』をまだチェックしてないジブリファンはぜひ見て下さい。

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ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016」

価格:Blu-ray 4,700円+税

   DVD 3,800円+税

発売・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン